石浦神社の風鈴市 |
兼六園近くにある石浦神社では、かつて土鈴の市があったらしい。それに因んで今年から風鈴市を実施したというので、地元のテレビや新聞のニュースにもなった。おもしろそうなので行ってみたのだが、少々期待はずれなところがあった。
風鈴市の看板
600個の風鈴が並べられたというが、2日目の午後に見たときは風鈴が少ししかなかった。石浦神社はそんなに大きな神社ではないし、浅草の仲見世のような通りもない。このような場所的な制約もあるが、風鈴市というからにはもう少しいろいろな種類のものをおいて楽しませてほしかった。風鈴の下についている短冊は石浦神社と書いた独自のものになっていたが、本体は通常の店においてあるものと変わらない。江戸風鈴も本物の切り口のぎざぎざのものではなく、丸めてあるもので音色的に今一つである。陶器の風鈴もよく見かけるもので独自性がない。
神社正面
風鈴を売る店
つぎに、せっかくの風鈴市だというのに音が楽しめるようになっていない。神社のすぐ前はかなり交通量の多い道路である。やはりある程度の静けさの中で、そぞろ歩きを楽しみながらというのが風鈴市には適しているだろう。浅草の風鈴市ではいろいろな風鈴を売る店が軒を連ねて、風鈴の音に包み込まれてしまう。それは蝉時雨に包まれるのと同じような感覚である。
周辺の道路
周辺の道路
しかも、露店ではラジカセでロックを大音量でならしていた。露店も賑わいをもたらすものであるので、それ自体はいいと思う。しかし、場所にそぐわない音楽はせっかくの風情を自らぶち壊してしまう。
ラジカセでロックを流す露店
以下はより魅力的な風鈴市にするための私見である。
一つには、風鈴自体にもっと趣向のあるものを増やしたい。金沢は九谷焼、大樋焼など焼き物が多くある。例えば、九谷焼の風鈴を作ってみるなどいかかであろうか。加賀市大聖寺のカントリーギャラリー風林館では、8人の作家による様々な風鈴が展示された風鈴祭りという催しがあった。伝統的な風鈴ばかりでなく、作家によるこのような新しい作品を展示することもよいのではないだろうか。
二つめに、風鈴の音を十分生かした雰囲気づくりをする。風鈴の魅力は美しい音色である。その音色を訪れた人に十分に聞こえるようにするための環境づくりが必要である。車の往来の多い場所であるが、夜7時以降は歩行者天国にしてしまうことも一案である。場所を広げて実施する手もあろう。石浦神社から本多の森のあたりまで広く市を設定しておけば、ある部分は道路から離れて市を設置できそうである。本多の森の広場辺りを舞台にするとあたりのムードもよく、楽しい市になるのではないだろうか。
金沢にはそぞろ歩きを楽しめる機会が少ないと思う。観光客は観光地ならばどこを歩いてもそれなりに楽しいだろう。しかし、地元に住む人々にとってはどうか。花火大会もじょんから踊りも虫送り火祭りも非常に求心的で、ゆったりとした情緒を楽しむものではない。自分のペースで、自分の感覚で楽しめる、そういう意味で私は風鈴市を非常に好ましく思っている。ぜひ来年は、音や風情をより楽しめる風鈴市にしてほしいと思う。